債務整理の際に過払い金が発生したパターン

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主文


1 被告は原告に対し,金180万8050円及び内金179万1933円に対する平成17年2月4日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決の第1項は,仮に執行することができる。

事実 及 び 理由


第1 請求


被告は原告に対し,金354万8035円及び内金335万4083円に対する平成17年2月4日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。

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第2 当事者の主張


本件は,原告が被告から金員を借り入れ,その返済を行うことを繰り返していたところ,過払い金が生じているとして,不当利得返還請求権に基づき,過払い金及びその利息の支払を求めた事案である。
1 争いがないか,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実
(1) 被告は金融等を業としている株式会社である。
(2) 原告は,昭和58年2月22日に借り入れた60万円を最初に以降平成16年12月24日まで,別紙「計算書」の年月日欄に記載のとおり,被告から「借入金額」「追加借入金」記載の金員を借り入れたり,「弁済金額」欄記載の金員を弁済した。
2 争点
(1) 過払い金の充当関係について
ア 被告の主張
原告と被告との取引は,昭和58年2月22日以降昭和60年6月26日までの取引(以下「第一取引」ということがある。)と,それから約10年経過した平成7年3月16日以降平成16年12月24日までの取引(以下「第二取引」ということがある。)との2つの取引に明確に分かれる。
そして,これらはそれぞれ独立別個の取引というべきであるから,第一取引終了時の時点で生じていた過払い金をもって第二取引において発生する債務に当然充当することはできない。
イ 原告の主張
本件のように,借り換えや借り増し等の一連の取引をする当事者は,その一連の取引の中にさらに複数の債権債務を発生させるような複雑な権利関係を望んでいない。
原告と被告は,一個の包括的消費貸借契約に基づく貸付や返済を継続的に繰り返してきたのであるから,第一取引と第二取引は別個独立の契約とはいえない。
そこで,利息制限法に基づいて計算を行った結果過払い金が発生していれば,その後の貸付に当然充当されるというべきである。
仮に,第一取引と第二取引とが,別個独立の契約と評価されるとしても借り換えや借り増し等の一連の取引をする当事者は,その一連の取引の中にさらに複数の債権債務を発生させるような複雑な権利関係を望んでおらず,むしろ債務をできる限り少なくすることを望んでいることは誰にも容易に推測できることである。
そこで,原告と被告との間には,弁済金のうち制限利息超過分を元本に充当した結果過払い金が発生した場合には,同過払い金と他の借入債務を即時対当額で相殺するとの包括的・黙示的な合意があったというべきである。
(2) 不当利得金に対する利息について
ア 原告の主張
被告は,利息制限法を超過した利率で原告に貸付を行ってきたから悪意の受益者である。
そして,被告は株式会社であり,被告の営業活動として行った取引により不当利得したものであるから,その利率は商事法定利率の年6%とすべきである。
イ 被告の主張
原告の上記主張は争う。
(3) 消滅時効
ア 被告の主張
第一取引が終了した昭和60年6月26日から10年が経過した平成7年6月26日に,第一取引に係る原告の過払い金債権は時効消滅した。
被告は,平成17年5月9日の弁論準備手続期日において,上記時効を援用するとの意思表示をした。
イ 原告の主張
被告の消滅時効の抗弁は否認する。
被告が制限利息を超過した高利息で多額の収益を上げながら,一方で過払い金について消滅時効の抗弁を援用することは公平を欠くことは明らかであり,信義則に反し,かつ権利の濫用である。

第3 当裁判所の判断


1 過払い金の充当関係について
乙号各証及び弁論の全趣旨によれば,第一取引の最終弁済があった昭和60年6月26日から第二取引の最初の貸付(20万円)の平成7年3月16日までの間には約9年9月の期間があること,原告と被告は第二取引開始に当たり新たに契約書を作成していること(乙3),第一取引と第二取引とは契約番号を異にすること(乙4,7)が認められる。そして,これらからすると,第一取引と第二取引とは社会的,経済的には別個独立の契約と認められないこともない。
しかし,第一取引と第二取引とが別個独立の契約と評価されるとしても,借り換えや借り増し等の一連の取引をする当事者は,その一連の取引の中に複数の債権債務を発生させるような複雑な権利関係を望んでおらず,むしろ債務をできる限り少なくすることを望んでいることは何人も容易に推測できることである。
また,民法508条によれば,時効により消滅した債権であっても,時効消滅前に相殺適状の状態にあれば,債権者は相殺をすることができると定められている。
これらの規定の趣旨や,本件における原告と被告のように借り換えや借り増し等の一連の取引をする当事者の合理的意思を忖度すると,原告と被告との間では,別個独立の旧契約に係る過払い金債権であっても,相殺に適した状態が発生する限り,その後の新契約の借入債務と即時対当額で相殺するとの包括的・暗黙の合意があったと認定するのが相当である。
そして,本件において,別紙「計算書」のとおり,昭和60年6月26日の段階で第一取引に係る過払い金債権が43万8825円発生していることが認められ,原告としては上記債権とこれの法定利息とを合算した金額を自働債権とし,第二取引に係る債務を受働債権として相殺し得ることになる。
2 不当利得金に対する利息について
被告は,利息制限法を超過した利率で原告に貸付を行ってきたから悪意の受益者というべであり,原告の支払が過払いとなった時点から過払い金に利息を付して返還すべきである。
しかし,不当利得返還請求権は民法上の請求権であり,消滅時効を10年とみることとの均衡その他諸般の事情を考慮すると,その利息は民法所定の年5%とすることが相当である。
被告が会社であり,被告の不当利得は被告の営業から生じたものであること等原告主張の諸々の事情を考慮しても,前記判断を左右するものではない。
3 消滅時効の抗弁について
前記のとおり,原告の第一取引に係る過払い金債権は,第二取引の債務と相殺充当され,その時点で消滅しているから,被告の消滅時効の抗弁は理由がない。
4 以上により,原告の過払い金を計算すると,別紙「計算書」のとおり,平成17年2月3日の段階で,元本179万1933円,利息1万6117円の計180万8050円の限度で認められる。
5 よって,原告の請求は主文の限度で理由がある。

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過払い金(かばらいきん)とは文字通り払いすぎた金銭をいうが、特に、利息制限法の定める利率を超える高利の借入れをした借主が、本来、借入金の返済は終わったのに返済を続けたため払いすぎた金銭のこと。
消費者金融業者との間で長期間にわたってグレーゾーン金利での借入れと返済を続けている場合、過払いになっていることが多いのが現状。
消費者金融やクレジットカード会社は、弁護士や司法書士などの専門家の介入しない件で、本人に対し、訴訟外で過払い金を返還することはまずあり得ない。
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本人訴訟の場合、貸金業者側の反撃に遭い、後記の民法704条に基づく利息を付さない和解に追い込まれるケースが多いといわれ、また、後掲のように、取引履歴の不開示があったり、充当関係で複雑な事案であったりすると、本人訴訟で法律上正しい金額の返還を受けることは極めて困難なのが現実。

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